3Dプリンタ業界研究 デスクトップメタル

3Dプリンタと業界

 

 

著者紹介:Nekoace(猫壱), PhD, MoT
電機→素材と転職をまたいで一貫して新規事業畑。モットーは「組織で唯一無二のポジションを取り続ける」&「社内政治を科学する」。社会人博士で培った専門性を使った技術コンサルと、新規事業プロマネが得意。学位取得をきっかけにSNSでの情報発信を開始。
【経歴】
修士(理学)
⇒ 電機メーカーにて研究職10年(在籍中に工学博士と技術経営修士をダブルスクールし取得)
⇒ 素材メーカーにて開発職(Now!!)

*この記事はプロモーション広告を含む場合があります

こんにちは、Nekoaceです。


今を時めく3Dプリンタ業界の企業研究を趣味で行う野良研究者です。
今日は気になる3DP企業の企業研究していきます。

*本稿はβ版として公開しています。新たな情報が入り次第更新していきます。

今回取り上げる3Dプリンタ企業

は、アメリカ企業最速でユニコーン企業になった超有名新興企業「DesktopMetal社(DM)」です。

この会社、金属3Dプリンタを世の中に広めた立役者の一社ですが、その業績は謎に包まれていました。

しかし一昨年ダブルユニコーンでIPOして以来、買収買収の快進撃。その勢いはとどまるところを知りません。

そんなDM社、啓蒙活動もすごく上手です。
前回記事で取り上げたAdditibe Manufacturing 2.0(積層造形2.0)を提唱したのも彼らです。

製品の特徴

DM社は、2015年創業の新興企業です。
3DPの業界では、長く覇権を握っていた 3D Systems や Stratasys、さらには EOS といった老舗企業が存在ししていましたが、売り上げベースでは年間100億円程度の時期が長かったのですが、2010年代以降、いくつもの新興企業が存在感を増してきました。DM社は間違いなくその中の一社です。

DM社の当初の主力製品は「Studio System」。比較的小型のマシンで金属造形が実現できるという触れ込みでした。
方式は Bound Metal Deposition(BDM)と呼ばれる彼ら独自の方式で、 Material Extrusion(MEX)に近い方式です。ノズルから金属材料を樹脂材料と混ぜた棒状の材料を押し出し、熱処理で樹脂分を蒸発させることで金属材料のみを選択的に射出することができる方式で、3DPで嫌われる多数の作業工程を削減できるとして革新的なものでした。

このBDM方式が非常に注目され、多額の出資を集めるわけですが、彼らが次にターゲットにしたのが大量生産の市場です。方式としてはBinder Jetting(BJ)を選択しました。BJ は粉体材料のベッドにインク状接着剤をを滴下。焼結工程でインクを抜くことで造形します。方式の違いがあれ、彼らのコア技術である、金属と樹脂の混合材料と焼結プロセス、さらにその取扱い(ある意味シミュレーション)のノウハウを共有化できるものでした。

 

上場と買収の歴史

そんなDMが上場したのは2020年12月。時価総額は実に2500M$。ダブルユニコーンでの上場でした。

その後、Additive Manufacturing 2.0 の構想もあり、BMD、BJ 以外の方式を買収により拡大していきます。以下一覧です。

大型買収は、何と言ってもEnvisionTecとExoneです。EnvisioinTecはWohlers Report によると2013年以降、年間1000台以上売り上げているSLA(Stereo Lithography:光造形)の老舗です。Exoneもまた、2018年では少なくとも数千万円するBJの大型機械を年間60台以上売り上げている老舗です。
小が大を飲み込む好事例と言えるのではないでしょうか。

Stratasysとのメガディール発表→破断

そんな折、突如発生したメガディール!

3Dプリンタ業界の巨人、ストラタシスとの合併観測が突如発表されました。これによりデスクトップメタルの株価の乱高下が激しい時期が続きました。

ストラタシスは3Dプリンタ草創期から市場をリードし続けてきた巨人です。ところが、彼らの強みは長らくポリマー系中心であり、徐々にポートフォリオを拡大しているとはいえ、金属系は弱い印象がありました。その点、金属3Dで強固な地位を気づいているデスクトップメタルが魅力に映ったのであろうと推察されます。

デスクトップメタルとしては、上場し得た豊富な資金で業容拡大しているところで、個人的には失うものの方が多いディールだと思っていましたがどうなのでしょうね。

 

ところがこのディール、その後、破断に至ります。ストラタシスの株主総会で決議が否決されたことが直接の原因ですが、この合併に関しては各所から反対の声が上がっていました。各種テクノロジー紙によっても、シナジーが見いだせない、という論調が目立ちます。また、ストラタシスの主要株主であるナノディメンジョンが反対していましたし、もう一つの業界の巨人、3Dシステムズも反対していました(独禁法抵触を訴えたという話も)。

 

いずれにせよ、案件自体は破断しましたが、元々締結していたパートナーシップは継続しているようなので、今後の動きにも注目です。

 

デスクトップメタルの業績

ではDM社の業績についてみていきます。

上場時に公開された資料が最初の売り上げ公開された資料ですので、2020年以降の四半期ごとの売り上げです。利益に関しては常に赤字経営です。ある意味スタートアップあるあるですが。

売上はEnvisionTecとExone買収によって50M$/四半期となりましたが、そこからは伸び悩んでいますね。この辺り、競合が活発化している点が大きいのではと推察していますが、そのあたりは別で書きます。

いずれにしろ、2015年創業ということを考えれば十分に拡大しており御の字という見方もあるでしょうが、今後の動向が気になるところです。

 

 

以上、今回は Desktop Metal の企業情報を簡単にまとめてみました。ただ、現在進行形で成長を続けている会社ですので、続報が出次第追加していきます。

このような形での企業研究、引き続き行っていきますので、またよろしくお願いします。

Nekoace

引用:
・Wohlers Report 2019
・Desktop Metal プレスリリース

タイトルとURLをコピーしました