【ものづくりで新規事業って難しい???】事業化しやすい業界はここだ!

研究と会社
著者紹介:Nekoace(猫壱), PhD, MoT
電機→素材と転職をまたいで一貫して新規事業畑。 モットーは「組織で唯一無二のポジションを取り続ける」&「社内政治を科学する」。 社会人博士で培った専門性を使った技術コンサルと、新規事業プロマネが得意。学位取得をきっかけにSNSでの情報発信を開始。
【経歴】 修士(理学) ⇒ 電機メーカーにて研究職10年(在籍中に工学博士と技術経営修士をダブルスクールし取得) ⇒ 素材メーカーにて開発職(Now!!) X

*この記事はプロモーション広告を含む場合があります 今回の記事のポイントはこちら 。

 

  • 企業の中で新規事業に従事されている方
  • 新規事業にいつか挑戦したい方
  • 新規事業に興味があり、どんな会社に入ればいいか検討されている方
    にNekoaceのN=1の経験をMOTで見聞きした各社状況を合わせて共有します!

こんにちは、Nekoaceです。
今回はNekoaceが本業にしているモノづくり系新規事業の難しさと成功体験を積みやすい業界について解説します。

新記事業に10年チャレンジし続けたNekoaceがモノづくり系新規事業の難しさについて解説する

さて皆様。新規事業と聞いてどんな印象を持ちますか?ここでいう新規事業は会社の中で新たに立ち上げる事業のこと。社内起業という言い方もありますね。最近は割と一般化してきた言葉かもしれません。
Nekoaceはこれまで10年近くも会社の中で新規事業に奮闘して来ましたがなかなか事業化まで至りません。最近前職の電機メーカーから現職素材メーカーに移ってきたのですが、いよいよ事業化まであと一息のところまで来ています。嬉しい(涙)。
こうした経験と、社会人学生としてビジネススクールMoTに通い様々な業種の方と会話していく中で社内起業のコツみたいなものが自分の中で朧気ながら分かってきました。
そこで今回は、Nekoace的、モノづくりで新規事業成功しやすい業界とその理由について書いてみます。
本ブログの方針は、ChatGPTが答えてくれない個人経験に基づいたN=1の経験を共有することにありますので、そういうもんだと思ってご覧ください。

モノづくり系新規事業で事業化成功し易い業界は・・・

新規事業は、ビジネスモデルが優れていることはさることながら、社内政治に優れていることも重要で、そのあたりはnoteの方で公開しています。
先に答えを書いておくと、新規事業を自分で推進していくならば、IT系を除けば化学と部品が最も成功しやすいと思っています。
なので、新規事業挑戦中の皆様、これから就職して新規事業やってみたい学生さんや、こうした経験を転職してでも積みたい方に向けてこの記事を書いています。

モノづくり系新規事業はなぜ難しいか

新規事業、特にモノづくり系の新規事業はなぜ難しいのでしょうか。
端的には、自分の専門とか得意不得意とか、そういうことを超越して、基本的に全て自分でやらなければいけない。だから、相当な覚悟と根性が出来ないと推進できない、そういうことと思います。この辺りは色々と本が出ているので、Nekoaceがいつも参考にする本をいくつか貼っときます。
おススメの本!
新規事業の実践論
NewsPicksにもたまに出てます麻生さんの本。有名どころです。リンクからあらすじ?見てもらえると分かりますが、独自のフレームワークとワードチョイスが直感的で分かり易い。Nekoaceもこの本から多大な影響を受けています。
イノベーションの再現性を高める 新規事業開発マネジメント:
これも大御所です。「イノベーションは狙って起こすのではなく、それを阻害する要因を排除することで、中長期的にイノベーションが起きやすい環境や条件を整えることでしか、再現性を高めることはできない」←ここ刺さりました。
スモールビジネスの教科書
これ、本記事の話題に近いです。小さく始めて経験積まないと大きな事業には出来ません。そのあたり大変腑に落ちる良書です。
さて、話を戻します。
新規事業って普通に暮らしていると目にする機会少ないですよね?というか、まだ目にする機会の多いと思われる「起業」自体大変難しいです。ベンチャーなんて何年後に潰れるか分からない。そんなイメージ多少なりとも持っているはず(最近はそこまでひどい状況ではないですが)。
対して新規事業は会社内で起業するわけです。
良いところとしては、会社から許可を得て、資金を得て、人材を集めて事業推進していくわけです。その意味で社内の事情に精通している、つまり、社内政治に優れているとこの辺り上手に推進出来て、普通に起業するよりもよほどうまく推薦できるかもしれませんね。
しかし悪いところとしては、結局会社の意思決定に沿って資金獲得するわけですから、外部から資金獲得するよりも事業拡大のスピードは遅くなりがちだったり、しょっちゅう変わる上司の方針に振り回されて事業推進と違うところでブレーキがかかる、そんなことも日常茶飯事です。
会社のアセット(資産)を使って、迅速に資金調達して事業拡大していく。そんな新規事業の理想を叶えることが出来る会社、実はそんなに多くないのが実情です。
例えば、IT系の会社。リクルートとかサイバーとかは次々新規事業成功させている印象あると思いますが、良く見るとほとんどIT系、アプリ開発とかプラットフォームみたいな営業とIT優位のビジネスです。
それはそれで役立つと思うので、勉強した方がいいです。リクルート創業者の自伝とか創業者の著書とかは読み物としても秀逸です。サイバーの藤田さんは説明不要ですね。こんな人です。
IT系の会社以外で新規事業すごく成功してる会社って思いつきます???
おそらく何社も思いつかないのでないでしょうか?
それは、モノづくりだと、時に数千万円数億円と言った大型設備が必要になるので、そもそも数自体打てないからですね。数打たなければ上手くいくものも行きません。
現にスタートアップでもディープテックはほとんどないこと、ご存じの方も多いでしょう。東洋経済が毎年出してる「凄いベンチャー」シリーズ、興味ある方読んでみてください。ディープテックの厳しさが良く分かると思いますよ。
ただ、海外だとモノづくり系のスタートアップが大分増えてますので、日本でもじきに伸びてくるとは思いますがまだ先の印象です。

新規事業が上手くいく会社の条件:両利きの経営が効いていること

IT系の会社以外で新規事業すごく成功してる会社について書いている有名な本はこちらです。
ご存じの方多いですね。
両利きの経営」のシリーズ。この文脈で良く語られるのは、銀塩写真→デジカメ/医薬品で復活した富士フィルムとか、ディスプレイ→電子/化学材料で大幅に事業転換したAGC(旭硝子)とかです。最近はソニーさんとかも調子いいですね。
両利きの経営って、ざっくりは既存事業でお金稼ぎながら、新しい部門を別個で立ち上げて独立して成長させていくわけですが、言うは易しで、会社の中にいると難しいのが良く分かります。
本稿はざっくりいうとどんな会社が両利きの経営できるのか?というところと同義ですが、本の中で書かれているコングロマリットよりももう少し業界レベルで一般化できるのでないかと思います。

新規事業はどうやって進むか:ステージゲート法が機能する会社/しない会社

新規事業が会社の中で進む流れ、どの会社も間違いなく使っているのがステージゲート法ステージゲート法とは― 『日本の人事部』)です。ざっくり研究/初期開発/後期開発/量産プロセスみたいな形でステージが進むごとにゲートレビューを設けて次のステージに進めるか偉い方が判断/決裁していく仕組みのこと。
仕組みとして大変分かり易く、最初のゲートまでは多くのプロジェクトが進むもののそこからゲートで数が絞られて、一つに対する投資金額が増えていく。分かり易い仕組みゆえにどの会社もこれをアレンジして使っていますが、この仕組みが機能する会社としない会社があるのです。

ステージゲートの難しさ①:投資額が異なっても同じ評価手法を使わざるを得ない

MOTで色んな会社の話を聞いていても、日本を代表するコングロマリット系大企業であればあるほどステージゲートが上手く回っていない印象を持っています。
例えば何兆円も売り上げている会社で、製品ポートフォリオがB2BありB2Cあり、価格帯も300円の電子部品から1億円の大型加工機まで揃えてる、みたいな会社あるじゃないですか。新規事業ってアイデア重視でやると価格とか分野とかに制限かけずに募集しがちなので、価格帯だけでもばらばらになりがちです。すると、ある製品の開発費一つとってみても小型装置ビジネスだったら500万円あればできるのに、加工機だったら1億円~開発費が必要みたいなことになる。これらばらばらな事業それぞれを同じステージゲートに乗せて議論するのって無理筋だと思いませんか???
この問題、結構色んなところで起きていると思っていて、だからこそ、色んな電機メーカーがステージゲート通して外発まで行く事業ってAIとかのIT系ビジネスだったりしている一つの要因だと思います(そこにビジネスチャンスがあることも間違いないのだけどね…)。

ステージゲートの難しさ②:そもそも適切に評価できない

これは①とも関わるのですが、評価者で良くあるのが社内の役員が担うケースです。
例えば、自社の既存ビジネスに近い分野の事業案だったら役員が主に評価することになります。この場合、経験豊富な役員であれば技術的/事業的評価まで行えるでしょう。
既存ビジネスと遠く離れた分野の話だったら役員は理解できませんから外部の人間を評価者で入れるとかしますね。その場合、決裁者は技術の話は分からないので、事業的評価が中心になります。
何が言いたいかというと、役員一人が評価するにしろ、自分の経験分野とそうでない分野がごちゃごちゃで、評価基準が公平にならないのです。これ話題になることは少ないですが、結構根深い問題です。

ステージゲートの難しさ③:レポートラインの場合分けは難しい

それともう一つ。これはステージゲートに限る話でも無いのですが、レポートラインの長さに柔軟性を持たせることが出来ません。
レポートライン、つまり何かお金を使う際の承認ルートですが、下っ端から行くと、
課長 部長 本部長 役員
みたいな感じで承認取っていく様子をスタンプラリーとか言います。
これ自体は必要なことで仕方ないのですが、新規事業においては、ビジネスサイズやビジネスの特徴に限らず同じレポートラインを使わざるを得ないことが問題です。
例えば、1億円で販売する装置を開発しているのなら役員まで順繰りに慎重にレビューする必要がある。それはそうかなと。
しかし、非常に競争が激しく市場環境の変化も大きい業界で同じことをしていたら一瞬で海外の競合に抜かれます。
一概にステージゲート/スタンプラリーと言っても、全社で共通の仕組みを使うというのは競争力を保持する上ではネガティブでしかないのです。
一般にスタンプラリーにおけるスタンプの数はブレーキの数、 と認識して、ビジネスに応じた仕組みを使わなければいけないですが、仕組みの複雑化を招きますから実際に出来ているところは非常に少ないと思います。

新規事業が上手くいく会社の条件は???

さて、それでは、ステージゲートに乗せて上手く事業化まで進む可能性の高い業界/会社はどのようなものでしょうか。一つ一つその特徴を紐解いていきましょう。

こんな会社なら上手くいく①:一つの分野にこだわりがある

兆円級コングロマリットだと実現するのがなかなか難しいと書きました。
なので、実現しやすい会社はその逆。特定分野でのガリバー企業です。

例えば、少し前の話だとカメラを作っている会社。日本に沢山ありました。キヤノン、ニコン、オリンパス等々。最近不調とはいえ、これら日本の会社は世界シェアを独占しています。好景気の時のこれら光学企業の中で新しいカメラ製品の提案をしたらどうでしょう?従来のカメラ製品の延長上の製品であればそれは漸進的イノベーション(これね)ですが、「新しい使い方のカメラ製品」であればそれは立派な新規事業です。適当に言うと、宇宙空間で使うカメラ、飲みこめるカメラ、レンズが無いカメラ、とか(実現しているのも幾つかありますね)?

他にも、特定の材料に特化した企業とか、特定の電子部品、後は特定の使い方をする製品とか、企業がそれぞれ軸持つ軸から外れなければ成功確率は高くなるはずです。

こんな会社なら上手くいく②:一製品の規模感が大きすぎなく、均一的

もう一つコングロマリットで上手くいかない理由に事業サイズがまちまちだと制度側が対応できないという点を挙げました。
だからこれも逆です。一つの製品の規模感が均一的である産業が良いのです。

1兆円の売り上げを誇る会社でもたまに、一製品の売り上げが1000億円です!とかの会社があるんですが、そういうところで新規事業というと地獄のように大変ですね。いざ、100万円で売る製品作りますよ!と号令かけても、社内で人材公募して集まるのは、億円の製品を作った経験しかない技術者です。小さいデバイスなのにメチャクチャ鈍重な開発プロセスになること、想像できますよね?

対して、一製品数億円とか数十億円のビジネスの集合体で出来ている会社だったらどうでしょう?新規事業として狙う規模感もちょうど良くて、集める人材や制度も狙いのモノにマッチします。この環境は新規事業としては最高の環境ここで成功できなかったら新規事業推進者の責任ですね(頑張って!)。

こんな会社なら上手くいく③:技術を極める素地がある

メーカーはやはりモノ作りなので、技術の蓄積は重要です。
製品の着想は勿論、それを量産で歩留まり高く安定供給するためには、その技術の動作原理とかシステムの中でのメカニズムとか研究的なところも把握しておかないといけません(こういう基礎的なところが分かってないと量産で炎上したときに打つ手なくなって詰むんですよね)。

会社によっては、基礎技術を研究所で10年単位で積み重ねている会社もあります。そういうところは不況の時でも本当に最小限の人間は残すんですよね、研究分野に。これは技術を極めること/継続することの重要性が分かっている会社でないとできません。

新規事業が上手くいく会社の具体例:まず化学か部品である

さて、それでは日本の会社の中でステージゲートを上手く回すことが出来る会社。
製品分野に対するこだわりが強くて、一製品の規模感が大きすぎず技術を大切にする会社。
それがどこか発表します。

それは、、、

化学メーカー 電子部品メーカー

と思っています。

Nekoace自身、前職はコングロマリット、現在は化学メーカーです。さらにMOTはじめ国内様々な会社の内情を聞きました。その中でこれらの条件に当てはまる会社はこの二業界に落ち着きました。

ちなみに、他には食品とかもそうかもしれません。が、自分自身分野にあまり詳しくないので、ここでは言及しないことにします。

この二業界、いずれも多品種少量の業界です。カタログ見ると分かりますが、とんでもない数の製品群を誇っていて、全社売り上げから察するにやはり、一製品数億円から数十億円がいいところと思います。

勿論、これら業界にも大規模製品はありますよ?化学で言えば石油化学とか炭素繊維とかは1000億円規模ですし、部品だってイメージセンサーはそのくらい。

それでもそういう大型製品は極めて少量で、会社の基本、つまり会社の文化は多品種少量なのです。

そして話を聞く限り、新規事業のプロジェクトチームは1人~数人でスタートして、数億円売り上げるところまで初期メンバーがやり切るみたいです。数十億円となるとさすがに大きな組織作って移行するみたいですが。
僕も自分のプロジェクトがいつそこまで行くか楽しみだったりします^^。

他の業界で新規事業成功したいならどうするか

さて、新規事業やってみたい、という方はそれなりにいると思っています。現在こうした多品種少量の業界にいる方は頑張って頂ければいいとして、別の業界、例えば重厚長大系の会社(インフラとか重電とか)やコングロマリットにいる方はどうすればいいでしょうか?

この場合も、もちろん事業化出来ないということはありません。ありませんが、難易度は高まっていくと思います。こうした会社では、多品種少量の会社と比べて文化の壁を超えないといけません。
するとどうしても必要になるのが社内政治です・・・

何を隠そうNekoaceも元々いたコングロマリットの会社で新規事業には大変苦労しました。結果行きついたのが多数のプロセスに同時に関わる横串プロジェクトの立案と実行、そこから目があるプロジェクトへの100%リソース投下でなんとか成功しようとしましたが、結局不発
それでもこのプロセス自体は間違っていなかったと思いますし、人にもおすすめ出来る立ち振る舞いです。

この辺りは有料Noteで公開しています。無料部分の前半部分のみでもお役に立てると思いますのでご覧ください(後半部分の有料部分は実際にどうやったかの実例書いているための価格設定です)。

もしくは、今いる会社にこだわりが無いのなら出来そうな会社に転職する手もありますね。
本ブログでは転職関連の記事も書いてますのでそちらも合わせてどうぞ。

それでは、皆様の新規事業の成功を祈って。

Nekoace

タイトルとURLをコピーしました