初めての論文の書き方 まずはタスクの4分割

研究と会社
著者紹介:Nekoace(猫壱), PhD, MoT
電機→素材と転職をまたいで一貫して新規事業畑。モットーは「組織で唯一無二のポジションを取り続ける」&「社内政治を科学する」。社会人博士で培った専門性を使った技術コンサルと、新規事業プロマネが得意。学位取得をきっかけにSNSでの情報発信を開始。
【経歴】
修士(理学)
⇒ 電機メーカーにて研究職10年(在籍中に工学博士と技術経営修士をダブルスクールし取得)
⇒ 素材メーカーにて開発職(Now!!)

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今回の記事のポイントはこちら

  • 初めて論文を書く方
  • 論文を書いてみたい方
  • 研究者の生活を知りたい方

に対して、論文執筆の全体像と何に時間をかかるのかといったニーズに答えます!

 

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初めて論文を書くときにはこれに気を付けよう!

こんにちは、Nekoaceです。

今日は博士が学位取得するために必要な「論文」についてです。Nekoaceは社会人博士ですが、基本めちゃくちゃ時間が足りないのが普通なので、タスク管理が卒業に向けた生命線です。

Nekoaceはこれまで、社会人博士として論文執筆を行ってきましたが、論文というものは非常に時間がかるもので、規程年次で卒業するには計画立てて論文執筆にあたる必要があります。私は論文執筆を4つのタスクに分解して行っていますが、今日はその辺りの話です。

論文執筆は何が大変か?

皆さんは論文というものについてどのようなイメージをお持ちでしょうか。

  • 英語で書かれた難しい文章のこと?(それは正しい)
  • 人類の知の拡張といった崇高なイメージをお持ちですか?(素晴らしいですが、実際は泥臭いことばかりです)
  • それとも仕事の一部であるから淡々と書きますか(そう思うならプロの方。。。)?

博士にとっての論文とは、

卒業という壮大な目標(!)の途中にそびえる高い壁

に違いありません。

その理由は大きく二つ。

1つ目は、

自分が書いた論理的(だと自分では思っている)な文章を、査読者というアカデミアのプロフェッショナルに納得させるための「査読」というプロセスを通過することが大変であること。

論文は多くの場合英語で数ページから数十ページにわたる仮説検証のプロセスを記述したものであり、これに対して数人の査読者が、細かくチェックし、数十から時には百近い質問を論文著者に投げかけます。著者はこの質問に対して、細かくすべて回答し、査読者の了承を得て初めて世の中に出す(出版)ことができるのです。そして、このプロセスは一度の投稿で出版されるかはわかりません。査読者の了承が取れなければ、別の論文誌に提出し、同じプロセスを踏むのです。この期間は長いと1年以上かかります。

2つ目は、

投稿から出版まで1年かかる場合もあるこの論文を博士課程に在籍している3年間に少なくとも1本は出版しなければいけないという時間的制約にあります。

そして社会人の場合、これを通常業務をこなしながら行わなければいけない。

つまり、博士学生が規定年次で卒業するためには、

論文の査読を通すという大仕事に加え、論文を3年間でいかに出版まで持っていくかのタイムマネジメント能力が必須

なのです!

「論文」の構成について

私が所属している分野(材料加工系のDeepTec)では、英語論文で4~15ページくらいが分量としては多いです。

論文は、特定の研究分野の中で、学術的に何か新しい事象が発見されていることが前提です。

構成としては、これまでの先行研究が示されていて、そこから新しい事業につながる仮説が提示され、仮説を裏付けるような実験結果とその検証プロセスが示されていることが必要です。

論文執筆にかかる主要なタスク

論文自体の書き方に関しては、ほかにも色々と詳しいものがあるので別途ググっていただくとして、ここでは、論文執筆にかかるタイムマネジメントについて書きます。

まずはタスクの洗い出しから。

先行研究調査:これは研究の大前提です。大量の論文を読んでまとめていきます。

研究(実験/解析):これがよくイメージされる研究の部分です。いろんな高価な装置を使って実験したり、スパコンで計算したりします。

論文執筆:論文を書くのも結構時間がかかって大変です。

査読対応:論文投稿した後に、査読結果を見て査読者と戦います。

以下で、私が論文執筆する際に各タスクにかけている時間について書いていきます

*ちなみに、管理人は、これまでに査読付き論文を4本通しただけのビギナー研究者ですが、博士号取得者の能力としては大体平均くらいでないかと思っていますので、そのつもりで参考にしてください。

先行調査研究

これは、研究のベースです。日々時間をかけて読んでいくしかありません。私の場合、博士課程の最初の時期は特に、週に最低3本くらいを目安に自分で読んでエクセルにまとめていました。読むスピードもだんだん速くなり卒業する頃には一本10分くらいでまとめていました。他にも、興味のある方が周りにいるのなら論文を読んで共有する勉強会も有効です。

論文執筆時には、特に、それまで読んできた大量の論文の中から、引用する論文を選び、自分が投稿した研究論文のストーリーを作っていきます。引用可能な論文数は投稿する雑誌によりますが、20ー30くらいが多いです(あくまで私の分野のレギュラーペーパーですので)。

この作業にどれほど時間がかかるかというと、社会人なので一日二時間程度論文執筆に使えるとして、2~3週間、時間にして10~15時間程度は費やすかと思います。

研究(実験/解析)

続いて最もイメージが湧く部分でしょうか。研究の部分です。

Nekoaceが博士取得した分野は実際の加工実験を主とする研究でした。

研究開始当初、博士入学前の準備期間やD1の頃は、実験機器の使い方や、先行研究の実験トレースなどを行っていました。これら研究準備を経て、自分の博士研究向けの実験に入りました。

それから、研究したい事柄の大きな目的に沿っていろいろな実験を行っていきますが、これら実験の一部を切り取って論文執筆していきました。大目的を博士論文、それらの部分部分を中目標に位置付けて論文化していったイメージです。

こうした実験期間は、一日二時間程度、というわけにはいきません。実験機は立ち上げ、立ち下げに一定時間かかりますし、やはり集中して実験したほうが効率が高いです。なので、この期間だけは会社にお願いして2-3日全日大学に行かせてもらって実験していました。

この研究のセクションでかかる時間は、論文向けのところだけで、実験に2-3日、解析にも2-3日、一日7時間として、大体40時間というところでしょうか。

論文執筆

論文執筆は、私の場合は最も苦しんだところです。というのも、ずっと英語が苦手でして、いまだに苦労しています。

私は、最初は、日本語箇条書きで、論文作成します。先行研究から実験方法、実験結果、ディスカッション、まとめといった流れをすべて日本語で確認します。たまに、最初から英語で書いた方が良いという話がありますが、私は英語論文もどうしても頭の中で日本語で翻訳してしまうので難しかったです(逆に、それでも卒業はできるということ)。

箇条書きで書いたストーリーを指導教員に確認してもらい、英語化していきます。これは進むときは一日で1ページ進みますけれども、詰まると5行の言い回しを考えて日が暮れることもあるほどです・・・

全体の時間としては、2時間/日で3週間くらいはかかりますね。30時間程度でしょうか。

出来た原稿を指導教員にチェックしてもらい、何度か修正を加え、論文誌に投稿します。投稿時には、図表のフォーマットなど雑誌ごとにルールが定められているのでしっかりと対応させていざ投稿です。これは、大体10時間程度でしょうか。

執筆と投稿を合わせて40時間程度かと思います。

査読対応

最期です。

投稿した論文は、論文誌により選定される査読者によって指摘を受けます。受けた指摘に対して、すべて回答し、査読者の了承を得る必要があるわけです。

ここにかかる時間は質問の内容にもよるので、なんとも言えませんが、私の場合は、論文執筆と同程度は時間がかかりますね。

40時間程度とみてよいと思います。

論文投稿にかかる合計時間とタイムマネジメント

さて、ここまで4つのタスクにかかる時間を概算ですが見てきました。

まとめると、

  • 先行研究調査:10‐15時間
  • 研究(実験/解析):40時間
  • 論文執筆:40時間
  • 査読対応:40時間

すべて総計して、論文投稿にかかる時間は大体130時間と出ました。

どうでしょうか、これはフルタイム学生が一日5時間くらい自分の研究に時間を使えるとして(後輩指導とかアルバイトとか色々あると思いますのでこれくらいの想定です)、26日、大体一か月ですね。一か月で論文一本書ければまあいいかというくらいではないでしょうか。

ChatGPTフルに使えばもちろんもっと早いですが、比率は大きく変わらないと思います。

ちなみに、これ、社会人学生にすると、一日2時間使うので、65日ですね。平日だけ使うと、稼働時間が20日/月ですから、社会人学生は3か月で論文一本書けることになります。

ここで落とし穴があります。初めて論文投稿すると結構な確率で査読で落ちます。だから、3か月かけて作った論文作成のプロセスをやり直しです。部分的に流用はできるでしょうが、また結構な時間がかかります。

ということで、実効的には、「3か月で論文一本」ではなく「6か月で論文一本」くらいがいいところでしょう。

ということで、3年で博士卒業したいのであれば、

D2終了時までに論文投稿できていなければ赤信号

だと思った方がいいです。これでも、D3のうちに出版できないリスクがあります。

私の場合は、D1のうちに投稿までもっていけて、半年かけたD2の中ごろに出版できました。それで少し心に余裕が生まれて、ビジネススクールに打ち込めたり、二本目の論文に取り掛かれたりしました。

社会人の方は、時間が無いのは間違いないのですが、このあたりのタスク配分はフルタイム学生より上手だと思います。実務経験があるので。

なので、私のこのあたりの実経験を参考にしていただいて、ご自分の博士進学計画や実務計画と照らして確度の高いタイムマネジメントをされるとよいのではないかと思います。

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まとめ

論文を出版するためのタスクを「調査」「研究」「執筆」「査読」の4つに分割。それぞれ時間算定、社会人の場合、3-6か月程度は出版までに時間がかかりそう。

各自の状況に合わせて無理のないタイムマネジメントを!

Nekoaceの社会人博士の体験記をこちら↓でまとめています。ご興味ある方はどうぞ。

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