著者紹介:Nekoace(猫壱), PhD, MoT
電機→素材と転職をまたいで一貫して新規事業畑。 モットーは「組織で唯一無二のポジションを取り続ける」&「社内政治を科学する」。 社会人博士で培った専門性を使った技術コンサルと、新規事業プロマネが得意。学位取得をきっかけにSNSでの情報発信を開始。
【経歴】 修士(理学) ⇒ 電機メーカーにて研究職10年(在籍中に工学博士と技術経営修士をダブルスクールし取得) ⇒ 素材メーカーにて開発職(Now!!) *この記事はプロモーション広告を含む場合があります
折角博士課程に入ったのに、「出来ること」「言われたこと」「経験したことがあること」から研究テーマを選択しようとしていませんか?
自分で博士論文を書いた実感として、せっかくなら博士課程の後の人生に役立つ研究をした方が絶対に良いと確信しているので、この記事を書きました。
ということで、今回の記事のポイントはこちら 。
- 研究テーマの選択に迷っている博士課程在学中の方(社会人含む)
- 社会人大学院(博士、MBA、MOT)への進学を検討されている方
- 社会人大学院への進学に興味を持っている方
に自分の将来のためになる研究テーマの選び方を知ってもらうこと!
博士課程で後悔しない研究テーマの選び方
今回は、博士学生にとって3年間の運命が決まると言っても過言ではない重要事項「研究テーマ」についてです。この選択を間違うと、なかなか研究成果が出ず、論文も書けず、つまり卒業も危うくなり。。。精神的にきつくなるかもしれません。
しかし一方できちんとしたテーマ設定が出来れば、卒業に必要な業績を積みながら将来の進路に向けた布石を打っていく実りのある博士課程にすることが出来るはずです。
Nekoaceは社会人博士ですが、テーマ設定の重要さは課程博士だろうが社会人だろうが変わりません。興味持たれた方はぜひ最後まで読んでみてください。
ちなみに、この記事の前段として、「研究室の選び方」はコチラの記事に。
研究テーマを実際にNekoaceが選択したときの実体験(光学分野です)はコチラにありますのでご興味ある方は合わせてどうぞ。
そもそも博士は研究テーマって自分で決めるの・・・?
と思ったあなた。
もし、これから博士課程に進もうと思っているのであれば、
もし、研究テーマは先生が(指導教員が)指示してくれるものと思っているのであれば、
その考えは改めてください。
博士課程では研究テーマは自分で決めるのです。
良く言われる格言に、
「学部生は言われたとおりに実行する力、修士は与えられた課題を解く力、博士は自分で課題を見つける力」
が必要と言います。
博士課程、つまり博士候補生は、その卒業要件に自分が主著者として書いた「査読付き論文」が業績として求められるわけですから自分で研究テーマを立案し、課題を見つけ、何らかの学術的な進展で社会に貢献することが求められると言えるのです。
修士までは研究室の設備とノウハウから出来る研究テーマを教員が選び学生に振り分ける場合もあるかもしれませんが、博士課程となると実現可能でしかも意義のあるテーマを自分で立案する必要があるということです。
卒業要件を含めた博士/MOT時代の生活に関しては別でまとめているので合わせてどうぞ。
博士での研究の分類:卒業に必要なのはホームランでなくヒットである
それでは、本題、「研究テーマの選び方」について入っていきますが、最初に大学での研究テーマの性質について最初にまとめておきましょう。
これもよく言われることですが
「研究者は論文書いてなんぼ」「口を動かすな手を動かせ(論文を書け)」
つまり研究者の価値は良い論文誌に何本掲載されたかで決まるという業績市場主義が主流です。
博士号を取るということはその世界に踏み込むということですから、博士候補生の内からもより良い論文誌に論文投稿したくなるでしょう。
でも待ってください。何か忘れてやいませんか?
それは、卒業するためには、論文掲載される必要があるということです。
博士課程の卒業要件は大体どこの大学も査読付き論文(もちろん英語)が2件掲載されていることです(場所によっては論文1件+国際学会1件の場合もあるようです)。そして論文は投稿してから掲載されるまでに1年程度はかかるものです。
つまり、博士1年生で一本目書きあげて投稿→2年生で二本目投稿、くらいのスケジュール感。これ、結構大変なの分かりますよね?
その上で理解すべきなのは、研究自体にも性質があるということ。
研究というと、誰も思いついていない革新的な成果で世間に新たな知見を提供する(例えばノーベル賞ライクな)研究がイメージされがちですが、こういったものに博士課程の頃から全力で取り組むことは、少し考えた方が良いと思います。
そういった革新的な研究は成功すれば注目される論文誌に掲載出来て、学会でもちやほやされるかもしれませんが、博士課程でそれをやってしまうと成果が出る前に卒業期限が来てしまう可能性があるからです。
そういったホームラン的研究は卒業に必要な論文掲載が完了してからチャレンジすべき仕事と思います。
そこまで革新的でなくとも、これまで報告されている研究内容の穴だったり(AとCの物質ではやられているけどBではまだとか)、従来の研究の延長的な研究だったり(こういう研究なら指導教員から貰えるかも)したもので、まずはヒット的論文を積み重ねてまずは論文掲載を目指しましょう。
始めて論文書くならばこれだけでもすごく大変なはずですよ。
Nekoaceのおすすめは、ヒット的論文二本投稿の目途が立ったところでホームラン的研究を始めることでしょうか。二本投稿して少なくとも一本が掲載されれば、卒業は結構何とかなるので(実際、僕も二本目の掲載は卒業間際の滑り込みでしたし・・・)
その点、修士で書いてた論文が博士でも使える場合や、社会人の方で会社で論文投稿経験ある方とかは卒業の観点からは凄く強いですね。
始めて論文書く人に向けて書いた記事もあるのでそちらも↓。
進路の分類:自分が進む道を「仮決め」する
博士課程入学前に将来自分がどんな研究者になりたいかをイメージしておくことも重要です。
絶対に大学で研究者になると硬く心に誓っているのか。
研究して得た専門知識を武器にして会社に入ってビジネスやってみるのもいいなと思っているのか。
海外に行って自分の力を試してみたいというチャレンジ精神を持っているのか。
はては、学生起業でもして一攫千金目指してみるのか。
人生死ぬまで長いので、どの可能性もあり得ると思います。
思いますが、どの可能性がどれくらいの可能性があるのかを決める。自分と向き合ってじっくり決めていくことも大事と思います。
以下で、それぞれの選択肢を取った場合、どんな研究テーマを選ぶべきなのかまとめていきますが、特に「研究者」になる場合と「企業就職」する場合、「起業」する場合、について詳しく書きますね。
博士取得後の進路:「研究者」になる強い意志を持つのなら
もしあなたが、「将来は大学教員になる」という強靭な意思を持つならば、出来るだけ目立つ業績を上げることを目指しましょう。この場合は、全球ホームラン狙いでもいいかもしれません。自分の生活のすべてを捧げて研究すると良いです。出来るなら素晴らしいことです。
そしてその場合にはもう一つ。出来るだけ有名な大学に行くことも重要と思います。個人的には大学名で優劣を決めるのは好きでないのですが、アカデミアは別だと思います。
これは事実として、主流大学の専任教授は圧倒的に旧帝大以上の大学出身者で占められているからです!
事実Nekoaceの所属していた地方国立大学でも、専任教員は旧帝大学以上もしくは当の大学出身者となっていました。元々優秀なのか、そういった環境で鍛えられたからなのか、理由は分かりませんが事実として旧帝大(出来れば東大/京大)出身者であれば卒業後のアカデミアでのポスト取得に必ず有利に働くはずですので、もし大学院進学時により有名な大学を目指せるのであれば学歴ロンダリングと言われようが気にせず少しでも良い研究環境を目指しましょう。
良い研究環境でホームラン的研究(新しい方式、卓越した性能、などなど)が出来れば理想ですが、教員になりたいならば、コンスタントに研究成果を出すことも勿論重要ですし、コツコツ成果を出した先に新発見があることも多々ありますので、そのあたりはやはり一生懸命研究し続けることが大事です。
Nekoaceは大学での研究経験は多くありませんですので、その場合はアカデミア一筋の諸先輩方から情報を取るように、お願いします。
博士取得後の進路:会社で研究開発するのもいいかと思っているなら
Nekoaceはこの枠ですが、企業での研究開発もいいものです。特に博士が自分の専門分野で企業で仕事できたなら最高。
多くの場合、企業は大学よりも資金が潤沢ですから研究の速度も速いし、何より自分の専門分野で大きく貢献した製品が世の中に出ていくのを見るのは技術者冥利に尽きます。
その辺はこの記事に詳しいです↓↓
それとNekoace実体験ですが、仮に博士を持っていても、日系企業で研究職をやると意外と実用化まで時間がかかったりするので、個人的にはより開発に近い職種が良いと思っています。
そのあたりはコチラにまとめています↓↓
もしも、企業で働くことを念頭に置くならば、研究室で会社との共同研究案件があったら是非参加しましょう。大学との文化の違いを肌で知ることが出来るのでお勧めです。そしてもし可能なら、その会社に卒業後そのまま就職してしまうのもあるです(海外だと結構スタンダードです)。
その辺はこの記事に↓↓
あとは、博士持ち技術者が企業に入って一番困るのは多分、技術以外の所。会社の中だと意外と幅を利かせているのが社内の政治的なアレコレ。。。
そういうのとご縁の無いところで生きていきたいと思いつつ避けて通れないやつです。この辺、生々しいとブログとかだと書きづらいのですが、Nekoaceが社外の方と話してく中での気づきと共通項をまとめて教科書作ったのでこちら見てみてください。好評いただいています。
博士取得後の進路:もしも起業を目指すなら
もしもあなたが起業を目指すなら。
ITの場合は、昨今ハードル低いので試してみたらいいと思います。
が、Nekoace含め未だに状況厳しいのがディープテック系スタートアップ。アメリカとかだと宇宙とか車とかでもたくさん出てきていますが、日本ではまだ中々スケールするのは難しい。
それでも、元をたどればソニーもトヨタもスタートアップです。やって出来ないことはありません。その場合には、やはり先駆者に話を聞くようにしてください。
おススメなのは LinkedIn とかで界隈の方見付けて気になる方に直接DMするやり方。 LinkedIn って結構、人事とかCEOから直DM来たりするのでおススメです。
後は、最近出てきてる博士特化系の人材サービス、例えば、TayoとかCOA Researcherとか登録しとくといいことあると思います(Nekoaceもお話したことある方ちょいちょいいるので)。
この辺りはNekoaceも興味あるので、もし物理/光学関わるところで検討してる方いたら声かけてください。お話ししましょう(XからDMが良きです)。
もう一つ、穴場なところですが、Nekoace自身がそんな感じなのですが、博士学生のうちにビジネスの勉強する手にMBA同時に通っちゃうとかもあるというウルトラCがあります。Nekoaceが博士とMBA同時履修していたのですが、MBAの方は学部卒の学生さんにせよ社会人学生にせよ起業志望の方が一定数います。
そして上手く教員と意識が合えば、修士論文で企業に関する分野の研究(および勉強)が出来るので結構抜け穴的におススメですMBAはまだまだ日本だと少ないので仮に就職する場合にも希少価値がありますよ(アカデミアに行く場合は分かりませんが。。。)。
Nekoaceの実例はこれまたこちらに詳しいので見てみてください↓↓
将来の姿を描いて、研究室を選んだら、いよいよ研究テーマの決定です!研究テーマを決めるにも何を基準で選んだらいいの???
そんなあなたのために、参考にすべき基準を列挙してみます。
これは王道ですね。自分の分野の学会、日本でも海外でもいいですが、興味あるところは片っ端から聞きましょう。
ここで、セッションが日本人ばかりな分野は日系企業で就職できる可能性は高いでしょうが先々不安なので辞めた方がいいでしょうね。。。残念ながら日本国内は研究レベルでも海外と比べて遅れている傾向があるのが事実です。
逆に海外で今流行っているけど日本人は少ないのなら今後日本でニーズが増えてくる(=就職先も増えてくる)ということ。狙い目かもしれません。
研究テーマの探し方:論文をまとめる
博士論文をまとめる時には、100本以上の論文を先行文献としてまとめる必要があるはずです。
また、普段から論文執筆する際にも毎回数十本分は書く必要がある。
そしてそのためには少なくとも500本以上の論文を博士課程の三年間で読み込むことになるはずです!
論文は人類の最先端の英知です。それだけ読み込んでいるならば、少なくともその分野では第一人者のはずです。
そんなあなたには、自分の分野でこれから流行るテーマが分かるはず。
自分の判断に自信を持って実行に移してください。
自分が良いと思う感性を信じるのです!
研究テーマの探し方:展示会に参加してみる
アカデミア、特に理学系で顕著ですが、どうやって産業界の役に立つのか皆目見当もつかない研究分野があるのも事実です。
その場合には、お勧めなのが企業が大量に出展している展示会に参加してみることです。
展示会って企業だけのモノかと思いきや、学生が発表できるブースがあるくらいですから、学生が情報収集のために参加してダメなことは全くありません!もし、企業に知り合いがいるのならばつてを頼れば良いですし、飛び込みで行っても歓迎されるはずです(ただ、お客さんと話している中に飛び込むのはハードルも高いので、出来れば空いている時間帯、朝とか会の初日とかが狙い目です)。
企業からしてみれば自社に興味を持ってくれる学生さんに声をかけてもらえることは嬉しいですし、場合によってはリクルートにも繋がるのでWinWinですよね!
研究テーマの探し方:先輩のお言葉を頂く
研究室の先輩に話を聞くことも大変有効です。
大きな会社であれば、研究室にリクルータとして先輩が来てくれることもあるかもしれませんし、学会などで仲良くなった方がいるならばSNS含めなんとか手段を取る方法もあるでしょう。
私自身も、研究会で知り合った学生さんのOB訪問も何度か受けましたし、実際に自分の会社に入学した学生さんもいます。リクルーター活動は、学生が会社と接点を持てる貴重な機会なので積極的に活用していきましょう。
院卒で専門活かしたい学生さんであれば幾つか就職サイトに登録しておくと会社で求められるスキルセットが把握できるのでおススメです。↓↓↓
→ 院卒者が無料で情報収集するなら「アカリク」で
いかがでしたでしょうか。
博士時代に選択する研究テーマは、技術者として生きていくなら一生ついて回るものです。
博士課程で後悔しない研究テーマを選ぶには、
・研究テーマは自分でしっかり吟味して選ぶこと
・ホームラン的研究でなく、ヒットも狙えるテーマにすること
・自分がアカデミア就職を目指すのか企業就職か、自分の将来の自己分析をすること
・論文や学会だけでなく、展示会やOB訪問を通して企業側のニーズも把握してテーマ選定すること
が重要です。せっかく進学する博士課程、自分が後で後悔しないようにしっかり考えていきましょう。
もう一度ですが、Nekoaceが光学分野で研究テーマを決めた時の実例です。個人情報たっぷりなので有料ですが参考にどうぞ。
\研究職として就職する気が少しでもあるのなら民間の情報も集めましょう!/