社会人博士体験記⑥ 社会人入試とその準備 落ちることってあるの?

社会人大学院体験記
 
著者紹介:Nekoace(猫壱), PhD, MoT
電機→素材と転職をまたいで一貫して新規事業畑。 モットーは「組織で唯一無二のポジションを取り続ける」&「社内政治を科学する」。 社会人博士で培った専門性を使った技術コンサルと、新規事業プロマネが得意。学位取得をきっかけにSNSでの情報発信を開始。
【経歴】 修士(理学) ⇒ 電機メーカーにて研究職10年(在籍中に工学博士と技術経営修士をダブルスクールし取得) ⇒ 素材メーカーにて開発職(Now
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Nekoace は、会社派遣の制度を使い社会人博士課程に進学しました。派遣が決まるまでには7年かかりましたが、無事入学できました。

今回は、入学に至る準備と試験内容について書いていきます。

今回の記事のポイントはこちら

  • 「社会人博士課程に興味がある方」「サラリーマンでももっとハードワークできるぞ!と感じている方」に対してケースを提供すること
  • 博士の入試で大事なのは何といっても研究計画。試験の内容と日程は良く確認しよう。
  • 社会人は社会人としての強みを活かした方がいい発表になるはず
 

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社会人入試とその準備 落ちることはあるのか?

皆さんは博士課程の入学試験というとどのようなものを思い浮かべるでしょうか。

学部や修士であれば学力テストが主になっていて、修士だと特に面接も重要ですね。博士だとその傾向がさらに進み、英語と面接、後は研究計画で決まります(少なくとも私の大学は)。

Nekoaceはこれまで20人以上の社会人博士に話を聞いてきましたが、面接で落ちたという話は聞きません。というのも、博士は入学前に教員と研究内容のすり合わせが必須で、落ちる場合はその段階で事前に教員からお断りが入るはずです。

これらについて自分の経験をベースに解説していきます。

博士ってなんだっけ?(再び)

Nekoaceは、博士とは一定の専門知識と論理的思考能力を備えていることが証明された人だと思っています。

この専門知識と論理的思考は、査読付き論文と、博士論文の審査会を通して養われ証明されると考えています。

査読というのは本当に大変で、複数人の研究者から、自分が書いた論文の先行研究調査→仮説→検証 のプロセスを詳しくチェックされ、多いと100近くにわたる質問を受け、それに一つ一つ遺漏なく回答する必要があるのです。

それでも、結局大多数はリジェクト(掲載不可)の連絡を受け、次の雑誌に文章を再校正して投稿するのです。

初めて投稿してから最終的に受理されるまでには、短くて3か月、長くて1年以上かかります。

博士課程を卒業するためには、この査読付き論文が受理されることが前提です。

私が卒業した国立大学では、英文の査読付き論文2本か、1本プラス英文の学会発表2本、が卒業までに受理されていることが必要ですが、これが大変なのです。

一般的な工学系の大学教員でも年間2-3本程度査読付き論文を通すのが限界ですから、初めて投稿する博士学生にとっては至難です。

一方、大学の在籍可能期間は通常3年、休学等含めて6-7年です。

そうです、査読付き論文が書けない人は普通に退学していく、それが博士課程です。

なので、実力試験はほぼ無意味なのです(私見です)。
過程の途中で振るい落とされるので。

入学準備と試験内容:英語

ということで、博士の場合、入学試験はさほど重要でないと考えているのですが、今後受験する可能性がある方に向けて記録を残しておきます。

まず、英語です。

Nekoaceの入学試験では、英語試験と研究計画のプレゼンテーションが必要でした。
英語の試験は、TOEICTOEFLもしくはIELTSで代用できます。Nekoaceは、社会人博士の検討を始める前に、なぜか海外MBAを検討していたため、IELTSのスコアを持っていたのでこれを使いました(全然自慢できる点数じゃないけど)。
上でも書いたように正直テストはそこまで大事じゃないので、TOEICなら700点あれば十分すぎるくらいじゃないかと思います。

IELTSならこの公式問題集TOEICならこれですね。いずれにせよ、普通に勉強すればいいと思います。

なぜ、IELTS勉強してたかというと、当時からTOEICの読み書きするやつがGoogle翻訳が出始めてた時期でどうも好きになれなくて、Speakingが入るやつをやりたかったということですね。
何度か紹介していますが、レアジョブ英会話 はおすすめです。全部で一年以上週3回以上やりましたが、話すことへの抵抗はきれいになくなりましたので。

事前にIELTSの点数を指導教員に伝えたところ、点数があまりよくないこともあったので、当日英語でのプレゼンテーションが追加で入る可能性があると聞いていました。博士課程の面接が柔軟なのが分かりますよね?

その場合、
10‐20分程度英語でプレゼンし、英語での質疑応答に答えられれば良いとのことでした。

実際の所、英語プレゼンが5分だけあって、以前に発表した国際会議の内容をかいつまんで説明しました。これ乗り切れたのは完全にレアジョブ英会話 のおかげです(笑)。

博士目指すなら、英会話は本当に大事です。

入学準備と試験内容:面接+研究計画

面接と研究計画、これはセットです。

Nekoaceの場合、会社派遣の社会人博士ですから、大学研究室は通常業務で関わっているところに決定していました。研究題目は、会社での研究内容と重なる分野で、今後も発展していきそうな題目を選びました。

また、入学前に1本英文での国際学会発表が済んでいました。これは卒業のための業績にカウントされます。

以上から、入学試験準備としては、何度かIELTSを受験したことの他には、研究計画書の作成で、試験用にたくさんの時間を掛けたということはありません。

入学する頃には、指導教員と出会ってから3年程度経っており、その間に学会発表やデスカッションもかなり行っていたため、心の余裕がありました。社会人はこういう進め方の方が良いと思います。

実際の試験ですが、結構なトラブルに見舞われました。
教員5名ほどの前での研究計画のプレゼンテーションを控えた面接日当日

実は、このプレゼンテーションを口頭で行うものだと思い込んでいまして(修士の時がそうだったので)、話す内容を暗記していたのですが、

試験開始1時間前に指導教員と雑談している中で、「資料の準備は万全ですか?」との質問が・・・

「し、資料???」
なんと、博士の研究計画発表は
パワーポイントの資料を見せながら発表するということを面接の20分前に知りました。。。

それはもう絶望的な気分になりましたが、幸い、会社PCと以前行った学会発表のデータが入っていたのでつぎはぎして事なきを得ましたが、心臓に悪い・・・

学会発表の話は以前別記事で書きました。

面接当日の発表形式については事前に指導教員と入念に情報交換しておくことをお勧めします。

英語での学会発表経験があることが評価されてか、英語でのプレゼンテーションは必要なく、日本語で研究計画を発表し、質疑応答に答え、無事試験終了しました。

個人的に心掛けていたのは、社会人博士であるという自分のポジションを意識した発表とすることです。

面接官としての大学教員の立場として、社会人博士に求めることは、論文の業績を挙げ、アカデミックに活躍することでは必ずしもないのです。

企業人なのですから、研究成果を如何に実際のビジネスに結びつけるかが重要なのです。

これが、社会人としての強みなわけですから、私も研究計画書の中に、研究し、論文発表していく計画だけでなく、どのタイミングで特許を取得し、自社のビジネスにつなげていくかのロードマップを話しました。

合格発表

試験終了したと同日に、指導教員に合格の連絡を貰いました。評価としては、やはり社会人として意識したビジネス展開の話が高評価だったようです。

こうしたことからも、社会人はライバルである他の受験者と比べての自分の強みを前面に押し出してプレゼンテーションすべきだと思います。

私の場合は、社会人であることでしたが、研究分野が希少であるならそれを押せばよいでしょうし、インターンなど特殊な経験があるならそれを押し出せばよいと思います。

博士は修士までと比べて、自分自身のアピールが必要で、そのアピールの仕方に正解はなく、自分の特殊性を押し出していくべきだと思います。

社会人博士で落ちるケースとは?

入試事態で落ちることは少ないと思います。
あるとすると、事前に教員と研究内容のすり合わせをしているときにお断りが入るはず。それは、素養が無い、というか、卒業まで頑張れなさそうと判断されたケースや、会社からの支援が得られない場合、プライべートの事情も考慮されると思います。
社会人はなにしろ時間が無いので。

博士の場合は、海外の大学と近いところもあって、入学よりも卒業の方が圧倒的に大変です。次の記事で詳しく書いていますが、やはり論文投稿が大変ですから。
入試で落ちるケースは聞いたことないけれど、卒業できずに退学するケースはもしかすると、半分くらいあるかもしれません。。。

それくらい厳しいものですが、事前にきちんと準備して、先人の知恵を備えていけばきっと大丈夫。博士優遇されると聞くケースが増えてきましたし。

まとめ

社会人博士の入学試験に関して、自分の経験をまとめました。社会人で、入学前に業績を持っている(学会発表)という特殊なケースかも知れませんが、何かの参考になれば幸いです。それでは。

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