【博士の転職 最終話】入社半年後の答え合わせ

転職とお金
著者紹介:Nekoace(猫壱), PhD, MoT
電機→素材と転職をまたいで一貫して新規事業畑。 モットーは「組織で唯一無二のポジションを取り続ける」&「社内政治を科学する」。 社会人博士で培った専門性を使った技術コンサルと、新規事業プロマネが得意。学位取得をきっかけにSNSでの情報発信を開始。
【経歴】 修士(理学) ⇒ 電機メーカーにて研究職10年(在籍中に工学博士と技術経営修士をダブルスクールし取得) ⇒ 素材メーカーにて開発職(Now!!)

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今回の記事のポイントはこちら

  • 博士の方、博士になりたい方
  • キャリアに悩んでいる技術者の方
  • 転職活動をしたいけれど何から始めたらよいか分からない方
について、博士持ち技術者が転職するまでの事例を紹介すること!

博士の転職体験記:入社から半年たって思うこと

こんにちは、Nekoaceです。博士の転職シリーズここで一旦のまとめです。

今回は、新しい会社に転職して半年経過した今、感じていることを書いていきます。

新卒入社した会社で新しい事業を作るという夢に破れて転職活動を決意したNekoaceですが、様々な選択肢の中から素材系の日系大企業の量産開発の仕事に就くことに決めました。

今の会社に入社を決めたときに、きっとこの会社はこうだろう、と予測していたことがあります。 今回はその当時の仮説が実際に入ってみてどうだったのかを主題に据えようと思います。

1つ目の答え合わせ:専業メーカーであることは事業化に有利か

前職では機械メーカーで新規事業を研究開発のレベルから担当していました。

産業分野はB2B、主な商流がオフィス向けでした。

他の記事でも書いていますが、3Dプリンタや材料加工装置などの分野で事業化を目指していたので、営業リソースから考えると新しい市場に対して新しい技術開発をしていたことになります。

アンゾフの成長マトリックスでいうと「多角化」領域、新技術 x 新市場 の分野です。 事業開発している中でも、技術的課題は勿論たくさんあるのと同時に、製造/営業/購買といったサプライチェーンの部分でもチャレンジが多かった。結果的にはこのあたりチャレンジする項目が多すぎて自分たちのチームだけでやりきれなかった、というところが敗因だと考えていました。

転職活動するときにそういった敗因をできるだけ払拭したく、やはり、
特定分野に強みを持つトップメーカーで、市場/技術どちらか一方だけでチャレンジすること、が必要だと考えて、それができる企業を選びました。

現職は特定の材料のトップメーカーです。そして、求人内容も、その会社で10年以上手掛けている技術分野ながら、少し新しい方式を使って、既存の市場にアプローチするというものでした。

この場合、企業としてサプライチェーンの問題はありません。

むしろ課題は技術にこそある。

言い換えると私が自分でこの技術を市場に出せるレベルにまで完成させさえすればかなり高い確率で市場投入が可能なのです。

これはなかなか燃えるシチュエーションですね。 さて、答え合わせです。

”専業メーカーであることは事業化に有利か”
この点は、 専業のトップメーカーで、技術/市場どちらかのみでチャレンジする製品群であれば可能性は高いだろう、ということです。実際に会社に入ってみてもトップメーカーの強さを目の当たりにしています。 この点、今の会社に入ったことは正解だった、と思っています。

2つ目の答え合わせ:量産開発と研究開発どちらが有利か

新卒入社した会社では、中央研究所での仕事が長かったです。

中央研究所だと基本的には、事業化検討する上で検討範囲の縛りがありません。 だからこそ私は、機械製品と材料製品の新規事業検討いずれも進めていました。
こういう環境なので、技術もマーケも企画も果ては知財や財務まで基本的に自分がやります(大企業なので色んな部署にお願いする、という方が正確かもしれないけど)。

このやり方、一番うまくいかないパターンが検討範囲が広すぎるゆえに上手くいかないという点。やっぱりこのやり方で事業化目指すと大変すぎるんです。
まして、アンゾフでいう技術/市場どちらも新しい(かかなり距離が遠い)「多角化」群だとほぼほぼ担当者が、文字通り燃え尽きる 
(いやいや、これら全部自前でやるなんて起業家みんなやってるじゃないか!と考えたそこのあなた!大企業にはレポートラインというものがありまして、同じ説明を上司を変えて例えば5回行う必要があるのです。研究計画/開発進捗報告/部品調達/知財戦略/・・・ありとあらゆる工程でまじめにホウレンソウしてみることを考えてください。大企業の厳しさが想像できるかと思います。その代わり雇用は安定しているが・・・。)

これやっぱりやり方が良くないよなあと考えていて、現職では研究所の求人は受けませんでした。 博士も持ってたので、「研究所配属でないけどいいのか」ということは何度も聞かれましたが、そのたびに、「ビジネスしたいので現場に近いところで」と答え続けてきました。

さて、そこで研究というよりも量産開発に近いところで働いているわけです。
量産開発というのでがっつり工場で製造ライン見ながらオペレーションマネジメントするのかと思っていたのですが、実は思ったよりもちょっとだけ研究よりでした。
工場とのやり取りは勿論あるのですが、そればかりでなく、研究所に近いところにある試作機で基礎開発をして試して、良ければ工場に飛んで製造ラインに開発したデバイスを組み込んでいく、そんな仕事です。

工場の中の開発本部、といった立ち位置でしょうか。感覚的には中小企業の開発本部、というイメージが正確かもしれないです。

この量産開発、研究との違いは開発サイクルが圧倒的に速いことです。
研究だと今の会社もそうですが、研究所所属で3年後とか5年後を見据えて研究開発します。
それが今の量産開発のところだと「3か月後にラインに乗っけてね」みたいな話がゴロゴロ転がっています。
だからこそ、最大瞬間風速的にめちゃくちゃ忙しい瞬間があるのですが、実際に製品に自分の成果を載せられる可能性も高い。
これこそ技術者の醍醐味、という感覚を毎日感じています。

さて、ということで2つ目の答え合わせ

”量産開発と研究どちらか事業化には有利か”
 これは事業化する、という観点でいうと間違いなく量産開発だと思っています。 だから、こちらも良い選択をしたと思っている。
やはり技術者は製品を世の中に出してなんぼです。今新卒で会社選びしている方も読者の中にいるかもしれませんので書いておくと、大企業の研究所はやはり、自分の研究成果を事業化出来る可能性はかなり低い、と思っていた方がよいと思います。
もし、研究に近いことをしつつ事業化したいと思っているなら大企業の量産開発の部門(事業部の開発部門とか、カンパニーの開発部門とか会社によって呼び方は違うのですが)か、中小企業の研究開発部門、がいいと思います。 大企業の研究所は上記の理由で事業化は難しくて、中小企業の量産部門だと本当に日々のラインの運営みたいなことが日々が過ぎていってしまうと思います(それがいいなら勿論いい)。

入って初めて感じたこと

他にも入ってみて始めた感じたことがあるので書いていきます。

1つは、素材メーカーのノウハウの厚みの凄まじさ
これはやっぱりすごいです。なんとなくイメージつくかもしれませんけど、日本の素材メーカーってグローバルでも存在感あるところが多いですが、その原因は外部発表していない現場のノウハウにあります。
本当にその分野のグローバルトップの技術者が世界中誰も知らないような情報とか装置をもって日々仕事をしているんです。
世の中の常識から何年も先を行ってるなあと感じることが多々です。

2つに、トップ研究者の人材の厚み
私は量産部門ですが、研究所まで見回すと、大学でその分野の助教から移ってきましたみたいな人が大量にいます。
アカデミアが嫌で抜けてきたのか、私みたいに事業化したくて移ってきたのか理由は分かりませんが、ともかくこのニッチな分野での日本の英知が集まっていると日々感じます。
あとは、大学から移って来た後に企画とか事務部門に移っている人も結構いますし、偉くなっている人もかなりいます。
この点、博士がちゃんと評価されているなあと感じて個人的に嬉しいです。

3つ目、ちょっとネガティブな話ですが、外部企業と連携するのが苦手な印象です。
世の中オープンイノベーションですから、複数の会社や組織が分業してことにあたるのが当たり前になってきている世の中です。 ですが、上述の通り社内のノウハウが異常に厚いので連携することによるノウハウの流出に関する反発心みたいなものが渦巻いているように思います。 この辺り、直近は今のままのやり方でいいのでしょうが世の中の流れもあるので徐々にそちら側にシフトしていくことは必要で、そのあたり進めるのも自分の仕事だと思っています。

まとめ

今日は、何が何でも事業化したい人であるNekoaceが入社時にこの会社でうまく事業化出来そうだと思った理由と、入社半年経ってその理由がどうだったかの答え合わせをメインに据えてみました。
結果的に、当初考えたことは間違っていなかったと考えていますが、だからこそ、自分の肩に事業化の成否がかかっているので非常に強いプレッシャーを感じながら仕事をしています。
これはこれで幸せなので、なんとか有言実行していけるように頑張ります。

以下テンプレですが、今回使った転職サイトのリンク貼っときます。
以下三つは博士さんの転職だったら比較的使用頻度高いと思いますしNekoaceも実際に使っていい感じだったので、登録まだの人はチャチャっと登録して勢いで情報収集始めちゃったらいいと思いますよ!

ビズリーチ:一つだけ始めるならやっぱりこれでいいと思います。使いやすいUIと圧倒的認知力。登録したとたんにアルゴリズム的にすごい数の求人が来ますので。スルーするもよし、試しで話してみるもよし。大体の相場観知るならやはりこれ。リクルートエージェントなりJACリクルートメントなりにここ派生でつながることも多いはず。プラットフォーマーとはこういうことか、と唸ることしきりです。

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それでは。
Nekoace


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