電機→素材と転職をまたいで一貫して新規事業畑。モットーは「組織で唯一無二のポジションを取り続ける」&「社内政治を科学する」。社会人博士で培った専門性を使った技術コンサルと、新規事業プロマネが得意。学位取得をきっかけにSNSでの情報発信を開始。
【経歴】
修士(理学)
⇒ 電機メーカーにて研究職10年(在籍中に工学博士と技術経営修士をダブルスクールし取得)
⇒ 素材メーカーにて開発職(Now!!)
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こんにちは、Nekoaceです。
これまで複数の記事で社会人博士の体験記を書いてきました。
今回はそれら記事のまとめ記事を書いてみようかと思います。
まず最初に、Nekoaceが感じる社会人博士のメリットとデメリットを示します。次に、これまでの体験記をまとめていき、最後に再度メリットとデメリットについて解説を加えています。
各記事にリンクを貼ることで、この記事から博士の生活全体を網羅できるような記事にするつもりです。お付き合いください。
社会人博士のメリットとデメリット
まずは記事全体を一枚図でまとめておきます。
社会人が社会人博士課程に進むことにより感じるメリットとデメリットをまとめています。それぞれ短期的/長期的に感じるものとして4象限で表しています。
この図を一旦頭に入れて頂いて、体験記各記事のリンクに移ります。この図の解説は一番下で解説します。
以下これまでの記事です。
地方国立大卒企業研究者が社会人博士を目指した理由
Nekoaceは、1つ目の修士を地方国立大学の理学部で取りました。
オープンキャンパスで訪問した大学のだだっ広さに惹かれて、吸い寄せられるようにヌルっと入学したのです。
当時は、日々、読書とアルバイトとマージャンとそこそこ勉強に時間を費やす学生でした。
できれば博士に進学したかったのですが、家庭の事情もあり断念しましたが、
ふとしたきっかけで社会人博士というものの存在を知り、博士進学を見据えてメーカーの研究職を志しました。
文化系研究職が企業派遣を勝ち取るために心がけたこと
その後、新卒入社した会社で、あわよくば社会人博士に進学しようと狙い続けました。
そのためには上司に気に入られる必要がある!などと慣れない体育会系的な活動に精を出し始めます。
上司にとって「理解可能なフィールド」で99%仕事をしっかりこなしながら、
1%の「抜け」をあえて作り、
特定の分野で卓越した結果を残すことを心掛けて、可愛がられる努力をしました。
その結果、重要な仕事を少しずつ任されるようになり、少しずつ、周囲と比べて目立つようになっていきました。
学会発表の社内レビューが地獄だった話
そんな中舞い込んだ学会発表のチャンスです。
初めての英語発表、初めての欧州です。
「地球の歩き方」片手に海外の空に思いを馳せていたころが一番幸せでした。
いったん完成した発表原稿に対して、チェック→修正→チェック→修正・・・。
資料修正の回数がまさに数十回。社会人が学会発表するのがこんなにも大変だとは夢にも思いませんでした。
入学許可が下りない時のメンタルの保ち方
少しずつ、博士入学にも近づいているかなあと実感しつつ、実際にはそううまくはいきません。
なかなか博士進学のチャンスは見いだせない。
それでも、固く決めていたのは延期はしても中止はしない、ということ。
会社の制度なのだから会社の都合に合わせるのは当然です。粘っていればいつかチャンスは来るはず、と信じて機を待ちました。
するとある日チャンスが。
突如上司に大学の先生に引き合わされて「こいつを博士に入れたいんです」。
忘れもしません。
私も即座に「そのつもりでした!」。
ついに博士入学に向けて前進したのです・・・!
会社から博士進学の許可が出ない時の裏技「自分の進学を自分で承認する」
進学予定の研究室とつながりは作れたものの、まだいくつも障害がありました。
社内制度を利用するために方々手を尽くしました。
何度もぶち当たる壁の一つが、決裁者の心を掴むこと。
大企業あるあるの決裁者の人事異動で、一から説明し直しになるのです。
フィーリングがあう上司ならいいけれど、そうでないと大変な困難を伴います。
このリスクを下げるためにとった作戦が、自分が取れる限界まで裁量を取ること。
最年少のプロジェクトリーダーとなることで、最小ですが決裁権を獲得。
自分で自分自身の博士進学を承認する座組を組むことで、提案を通す可能性を高めようということです。
社会人入試とその準備
無事、社内制度に伴う条件はクリアしました。
いよいよ入学試験です。
といっても社会人なので簡易的なものでしたが。
試験30分前に、プレゼン資料を作成するという綱渡りな面もありましたが、無事合格。
晴れて社会人博士になりました!
数字で振り返る社会人博士
謎に満ちた社会人博士の生活(笑)。
そのリアルな生活を数字で具体的に残します。
大変なのは博士よりも断然、査読付き論文投稿のタイムマネジメントですね・・・
社会人はマジで時間無いですから。
そんな経緯で無事卒業まで漕ぎつけました。
その過程はとても長く、いつ終わるとも知れない長い道のりを歩いているようでしたが、終わってみると意外とあっけないものでもあります。
良く言う話ですが、学生になると学割使えるじゃん!とか良く言われるのですが僕が一番使ったのは大学近くのラーメン屋の味玉無料が一番です(3年間で50食くらいでしょうか・・・)が、もう一つ Amazon Prime Studentは確実にやって良かったです。
そもそも無料期間が何故か6か月と驚異的な上に、その後の月額も300円/月。学生さん向けとして文房具/PC/書籍の割引もあるので学生さんはやらなきゃ損。というか、時間管理術の記事の方で書いてるのですが、一週間の内、唯一の隙間時間はAmazonPrimeで埋めてましたから(時代・・・)。
リンク貼っときますので(↓画像クリックでリンク飛びます)まだの方どうぞ。
社会人博士のメリットとデメリットを解説する
ということで、博士論文を無事期日通りに提出し、卒業することができました。
これで晴れて念願の工学博士です。ビジネススクールや、これらを同時にこなした時間管理術は別途記事を書いていますので、ここでは、
社会人博士課程に進学した際のメリットとデメリット
について書きます。
最初に貼った図をもう一度出しましょう。
社会人博士進学のメリット①:研究って楽しい
まずは、ここから。
研究って本来楽しいものじゃないですか。
だって自分が面白いと思ったものを突き詰めていくことが出来るんですよ?
そりゃあ、元々考えることとか頑張ることが嫌いな人が好きになれるとは思えないですけれど、好きなことを出来るっていうことはそれだけで価値があることです。
が、学生のうちってこのことになかなか気付けないんですよね…
だからこそ、社会人経験した後に大学に戻ると研究ってメチャクチャ楽しいものだと気付くんです!(これマジ)
社会人博士真っ只中にいるとそれはもう忙しいのでなかなか余裕も無いのですが、社会人博士をやり切れるかどうかは、この研究の楽しさみたいなものをよりどころにして最後まで走り切れるかにかかってる気すらします。
社会人博士進学のメリット②:景色が変わる
長期的にみると、自分の経歴に自信がつくというのは大きなメリットと思います。
会社で入っている方、日々達成感感じてますでしょうか???
自分は今年これを達成した、とか、これをやってやりがいを感じた、とか何か達成感を感じているならいいのですけれど、仕事って必ずしもそういう仕事だけじゃないじゃないですか。
その点、博士だと、「博士号」という明確な成果が手に入るのでこれが達成感に繋がるんです。
そして、実は博士号取得に至るまでの論文投稿とか、学会発表という小さな目標がそれぞれ小さなマイルストンとして達成感を得られる仕組みになっています。
この過程って振り返ってみると結構大事で、卒業して博士号達成したときにそれまでの道のりが小さいマイルストンの景色と一緒に振り替えることが出来るようになっている。
「あの時の九州の学会は楽しかったな。そういえば初めて賞を貰ったのはあの時だったな」
「初めての国際学会では海外の技術者に始めて名刺貰ったな」
とかそんな感じ。
そして、その経験を乗り越えて博士号を取得した後にはまた景色が変わって見えてきます。
「修士の私」と「博士の私」では見える景色がまるで違う。
この見え方は人によると思うので是非ご自分の目で確かめてください。
Nekoace個人としては、会社の3年間よりも圧倒的に見方が変わったのが博士の3年間でした。
それともう一つ。自分の限界が分かることです。
会社に入るとどうしても、忙しさで体調崩す人が出てきます。重いものだと鬱に近かったりして、長期間戻ってこれなかったりもします。
これ一旦、良い悪いの問題は置いといて、どこの職場でもそうなる方はいるんです。
ところが、博士卒で会社入って来た方見てるとメンタル崩すケースってほぼみないんですよね。
これはおそらく、博士課程で一度自分の限界を知っているからだと思っています。
博士、特に社会人の時間の無さは尋常でないので、ここで体力の限界を見返るケースもありますが、乗り越えれば会社の仕事は楽に感じてしまうはず。ある意味生存バイアスかかってるか?と思わなくもないですが、会社入ってから激務になるよりも大学で一度経験した方が自由度は絶対に大きいので概ね乗り越えやすいはずです。無理はしないでほしいですが。
この経験もやはり、卒業前後での景色の違いに繋がりますね。厳しい博士課程を乗り越えた自身、というと前項と近いかもしれませんが。
ここで超大事なのが、社会人博士の扱いに慣れている研究室に入ること。この記事に詳しいので参考にしてください。
社会人博士進学のメリット③:見る目が変わる
博士と修士では、周囲からの見られ方が違います。ここでは三つ挙げますね
一つ目は、博士を取るとその分野の専門家として見られることです。
当然なんですけれども、博士を取って企業に就職する、ないし、元の企業に戻ると、その分野に関しての専門的な話を自分に通してもらえるようになります。これは周囲からその分野の専門家として見られるということで、これは自分のブランディングの観点からも大変素晴らしいことです。
そして、もっと顕著なのは、海外で初めて会う方に経歴を注目されること。良く言う話で海外だと博士号の価値が高いということ。日本でも評価されないことは無いのですが、海外だと大変顕著です。
Nekoaceの場合も、まだ海外で仕事することは少ないですが(コロナもあったので)、少ない海外出張の中でも、日本では経験がないくらい注目されているのを感じます。
上司と二人で出張行っても、名刺交換で一番盛り上がるのはPhDの専門分野の話で、Nekoaceは博士の専門と仕事がほぼ同一分野なのでこの話になると大変注目されます。「Professional」と言われて嬉しくないわけがないですね。
専門家として見られることは良いことですが、何も手を打たなければどんどん陳腐化していきますし、自分のキャリアにも反映させていくことでより深い専門になっていく。この辺りは以下の記事で博士持ち技術者の日ごろの振る舞い方について詳しく書いているので参考にしてください。
この場合には、分野選びが非常に重要です。どうせなら今後の人生で長く自分の強みになる分野を選びたいもの。Nekoaceの分野選び実例もこちらに残してます。ざっくり光学分野です。
二つ目に挙げるのは友人が変わることを挙げます。きちんと言うと、友人の質が変わることです。
元々の友人が変わるわけではもちろんないのですが、何か目立った経歴があると、多かれ少なかれ周りから人が近づいてくるようになります。もしあなたが博士持ちになったなら、社内の同じ博士の方に話しかけたくなる気持ちありますよね?
何か目立つ経歴があると、近い経歴だったり、似たような経験をした方が周りに増えてくる。そしてこれは往々にしてその後の生活に良い効果が出てきます。厳しい経験を潜り抜けた人は得てして会社の中でも成果をあげるもので、その方々は高確率で偉くもなる。周囲にそういう方が増えれば自分の仕事も回りやすくなる。
友人が変わる、この効果、侮れないものと思っています。
三つめは必要とされる機会が増えることを挙げます。
前の項とも重なりますが、博士をとるとその専門性が求められるケースが増えてきます。業績を見て社外の方からお声がかかることもありますし、それを起点で副業始められたりして・・・
転職する場合にも、専門活かすと好条件で転職できたりして、
Nekoaceは博士取得してからX始めましたが、こちらでも似た境遇の方と知り合うことが出来て、実際にお会いしたりしてますし。
周囲に必要とされる、自分だけのスキルが着く。そんな博士号取得をお勧めしたいのです。
社会人博士進学のデメリット①:時間が無い
デメリットの方もきちんと共有しないとフェアでないですね。
まずは一つ目、圧倒的にこれですね。社会人博士は時間が無い…
社会人博士は多くの場合、自分の本業に加えて研究活動をするのでしょう。
中には家事/育児がある方もいらっしゃいますし、
極めつけには、さらに本業+家事/育児にビジネススクールも同時期に突っ込んだ猛者がいるらしいという話を聞いたことがありますね。。。(あんな生活もう嫌です( ゚Д゚)誰?)
必然的に皆さん自分の時間を削ることになるのですが、これは宿命です。ここまで書いた数々のメリットを得るためだと思ってこらえてください(涙
社会人博士進学のデメリット②:お金がかかる
これは博士進学の費用の所でも書きましたが、お金もかかるはずです。
社費の方なら学費はかかりません(かかる場合は国立大の普通の学費)が、遠方の場合は交通費がかかったり、自分で必要な教科書代とか、あとはPCとか必要な物品も買うケースがあるでしょう。
これは明確なデメリットですが、落ち着いてください。大人パワーからすると絶望するほどのモノではありませんから。
20万のパソコンくらいならポンと買いましょう。卒業後に得られるメリットを思い出してください。
社会人博士進学のデメリット③:友人が減る
これもちょっと大事な話。大概元々の友人が減りますね。
これなんでかって言うと、絶望的な時間の無さから遊びに行けなくなるからです。。。
Nekoaceは色々と無茶な生活をしたからですが、博士進学していた三年間は指導教員としか飲んだ記憶がありません。教員は良く自室で学生集めて酒宴を繰り広げるタイプの方だったので、コミュニケーションの一環だと思ってグビグビやってましたが、会社の同僚とかとはこの時期さっぱりでした。
卒業後は卒業後で、別のコミュニティに属することが多かったので結局それっきりになった同僚も沢山いますが、しょうがないです。大人になるというのはそういうこと。
それに飲み会行くなら普通に論文読みますよ、てんぱり過ぎてです。
社会人博士進学のデメリット④:ワーカホリックになる
衝撃の事実。最後4つ目ですが、博士持ちはすべからくワーカホリックです。
もう博士時代に土日に論文書きまくってたせいか、土日に何かしてないと落ち着かないんです。僕なんかもう、長期連休に何か新しいこと始めてないと後で自己嫌悪に陥るので、年末年始とかお盆には必ず何か新しいことを始めて妻に呆れられる毎日です。なんでこんなことになってしまったんでしょうね(遠い目
大概今幸せなのでいいんですけどね!
最後に
さて、ということで長々と書いてきましたが、社会人博士に進学するメリットとデメリット。どうでしたでしょうか?
博士体験記の各種記事、読んでもらえれば分かると思いますが、Nekoaceは取りたかった博士も取って、専門活かして高年収頂ける仕事に付けて、大変満足してる毎日です。
別でも書いてますが、決して超絶頭が良いわけではない(最初に入った大学は旧帝大とかじゃないですから)です。博士のスキルを上手く使い続けている結果と思います。
今の私の経歴は、
理学修士 × 技術経営修士 × 工学博士
を持つ企業研究者。
おかげで、
サラリーマンでありながら、会社に頼らず自分の力で自分の立ち位置を確保している自信
を持つことが出来ていて、こういうちょっと変わったキャリアの方が増えるといいなあと思っています。
ということでこの記事はココでおしまいですが、社会人博士と言うと社内政治に強くなければいけません。noteの方で「社内起業の教科書」というものを書いているのですが、これ実は社会人博士の話が肝になっています。博士の仕事を実際の仕事に紐づけて、仕事と研究を両立していった話。
Nekoaceのここまでの記事を気に入って頂いた方はおそらく気に入って頂けると思っています。有料ですが、無料では書けないリアルな話をずらずらっと並べていて、そこらの自己啓発本よりも好きな人は絶対刺さるはず。
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